7月17日から東京・目黒の起業家のベースキャンプ「Impact HUB Tokyo」にて、メンバー兼アーティストの牛木匡憲(以下:牛木)さんがコミュニティと繋がる個展を開催する。Impact HUB Tokyoのイベントホストであり、自身もグラフィックアーティストとして活動する島地(以下、IHT)がインタビューをした。

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刷り込まれた常識的価値観とどう折り合いをつけるか?

 

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ーなんとなく牛木さんのお話の背後には、業界に対する問題意識みたいなものもありますね。

牛木:僕らの世代だけではないかもしれないですが、なんとなく親からの先入観といいますか、結婚はしなきゃいけないとか、子供は産まなきゃいけないという刷り込みがどうしてもあり、その中でアーティストを目指すみたいなことはとても矛盾してました。そこで壁にぶつかってしまい、それじゃあできないな、みたいなことで3回ぐらい挫折して…。

 

ー自分の中での葛藤に度々負けてきたと。

牛木:はい。一方で子供がいる生活の良さにも気づくことができたので、それを諦めてまで絵を描かなくてもいいぞ、という思いもあるんですよ。

決して偏見を持っているわけではないですが、女性に対しては特に子供を諦めてまで絵を描かなくてもいいんじゃないかと思っています。僕自身多くの感動を得ているし、子供って多分クリエイティブなことだと思うんです。なのでクリエイティブなことを愛している人たちが子供を諦めるというのは残念な話だな、と。

 

ーなるほど、つまり牛木さんの中ではある意味一般的、常識的な価値観と、アーティストとしてやっていくことをどこでバランスをとるか、みたいなことが常に課題になっているという感じですね。

牛木:うん、まあアーティストという存在が輝きすぎだったんですよね。

 

確かに、変わった人が多いのは事実ですが(笑)

 

Impact HUB Tokyoはビジネスとアートが出会う場所になり得るか?

 

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ーImpact HUB Tokyoの特徴的なこととしてコミュニティ意識を大事にしているという側面があります。先ほども話題になりましたが、Impact HUB Tokyoとしてはアーティストやクリエイターをこのコミュニティ内に増やしたいという思いがあります。そうしたコミュニティとの関わりへの印象や、Impact HUB Tokyoというコミュニティ自体への印象などどのようにお持ちですか?

牛木:クリエイターが集まる場所になったら魅力的だと思いますね。実際には今、カフェや飲み屋さん的な空間でクリエイターが経営しているところもいくつかあります。金曜日の夜にいけばイラストレーターやデザイナーなど誰かが必ずいて、そこで盛り上がるみたいなのは。でも特にお酒が入るわけでもなく、陽の光を浴びた中でクリエイティブな話ができる場所はそうそうないので、そういうのはいいんじゃないかと思います。

皆一人でやっていることが多いので、僕のように寂しさや虚しさや、鬱々とする感じがここに来てリセットされるような場所があるのはいいのかなと。
また、そこで展覧会をやっていると、人が集まるいいきっかけにもなると思うし、ただコーヒーを飲みに行くだけでなく、もうちょっとクリエイティブな口実があるのはいいですね。

 

ー僕自身、日頃イラストレーターしても活動していますが、過去には広告を中心として受注仕事をするのがイラストレーターの仕事でしたが、今は自分たちで仕事を作っていくことも必要になってきていると思います。それがあってこのコミュニティに参加したということもあるのですが、一方で企業が新しいビジネスの軸としてアートやクリエイティブを真剣に取り入れていくことが求められているという話もあります。

牛木さんが日頃活動する中で、そのような気運を感じるようなところはありますか?

牛木:今まさに来ている仕事は、そうした考え方に則っているというお話は聞きました。詳細は言えませんが、例えば広告で一つの商品を扱う際、それにまつわるいろいろな要素を洗い出していってその一つをプロモーションで使うということは以前からやっていることです。その中でも近頃はアートやデザインに関わる部分が少しでもあれば、そこを重要視するような傾向はあると思います。

 

ー例えばImpact HUB Tokyoのこの場所でも、スタートアップの起業家と、これからここにやってくるかもしれないクリエイターとのコラボレーションが生まれるとか、そういうことに対する期待感は持てそうでしょうか?

牛木:そういう期待はすごくありますよ。でも、それには何かしら通訳的な役柄役割ができる人が必要だなと感じます。僕自身Impact HUB Tokyoに入ってみて、起業家たちとのビジネスのテンションも違うし、彼らのアートに対する考え方にも距離がある感じがして、そこでこちらのやっていることを価値のあるものとして考えてくれれば最高ですが、自分たちでもできるけどちょっと変わったものがほしいからやってよ、というような具合ですと今までと変わらないですし。そのような状態でお金のあるスタートアップ企業ならいいですが(笑)、今はお金もないのでタダ同然でやりますよ、みたいな話を始めちゃうともうキリがないですからね(笑)

 

「ファインアートとイラストレーション」というテーマ

 

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ー会期中22日(土)にはレセプションパーティとトークショーがあります。その内容について少しご紹介ください。

牛木:ここ10年ぐらい自分の中の熱いテーマとして、ファインアートとイラストレーションという二本柱があって、それを軸に今後も展開していきたいと思っているのですが、それらの双方の代表的な先輩をお呼びして話します。

一人はアーティストとして長年ご活躍の水野健一郎さん、もう一人はイラストレーションの世界で目立つお仕事をされている師岡とおるさん、そしてイラスト業界の大先輩であり、多様なアート展のプロデュースにも携っている高橋キンタローさんの3人なんですが、水野さん、師岡さんのお二人はもともと僕のデビューのお仕事でご一緒させてもらってその後も仲良くさせてもらっている人たちです。お二人とも表面的にサブカル的な手法を用いていますが、考えていることは180度違ったりしているという不思議なバランス感が面白くて…。彼らの話は今の若い人たちにとってもイラストレーションってなんなのかとか、現代アートって今どうなってるの?とかいろいろ気になっていると思うんです。キンタローさんは、大人の視点からのオブザーバー的論客としてお招きします。

今の若い人たちには、イラストレーションの世界がすごく輝いて見えているような実感があるのですが、少し前は村上隆さんたちがやっている現代アートのフィールドが若い世代に影響力があったときがあり、それ以前にはまたイラストレーションの時代がありました。僕らは美大に行ったりしてそうした流れを見てきたりしているのですが、今の若い子たちは僕らが憧れた人たちのことを何も知らず、それよりインスタグラムで10万人のフォロワーがいる人が有名だったりして、そうなるとマーケティングとしてしかける側もそちらに合わせていくしかなかったりと、先が読めない時代になっています。

最近は日本のアートギャラリーでもイラストレーターをピックアップして、ファインアートに引き上げてくれる傾向もあるし、海外でもイラストレーション出身のファインアーティストが目立っていたりとイラストレーションとアートにまつわる熱い話も展開されると思いますが、日本の場合そこまで熱くなってもしょーがないじゃんみたいなところもあって(笑)、最終的には笑い飛ばす感じにもなっちゃうかもしれません。

現代アートを真剣にやってる人が聞いたら、腹を立ててすぐ帰っちゃうかもしれないですけど(笑)

ー実際には、そんなこともないと思いますよ。

 

牛木:でもそういう人たちにこそ、こういう話を聴きに来てもらって若い人たちが感じている現状を知ってもらったほうがいいんじゃないかという気もします。

ー楽しみなトークになりそうです。今日はどうもありがとうございました。

 

牛木匡憲(うしきまさのり)
1981年生まれ。武蔵野美術大学卒業、文具メーカー、ウェブ制作会社、ゲームグラフィッカーを経て現在アーティストとしてイラストや展覧会などを通して国内外で活躍中。NHK Eテレ『シャキーン!』や伊勢丹新宿店クリスマスキャンペーン、TOYOTAカローラ50周年ムービー出演、サーマソニックでのライブペインティングなど。イラストレーション、広告、イベント、映像、SNSなど様々なジャンルでその存在感を発揮している。http://www.ushikima.com/ 
島地正彦(しまじまさひこ)
カタカナ表記のシマジマサヒコ名義で、イラストレーター/グラフィックアーティスト、ミュージシャン/ベーシストとしての活動を行なうアーティストである一方、Webやグラフィックのデザイナーとして合同会社(PLUCK Creation, LLC)を設立し運営しているマルチクリエイター。IHTのホスト業務をサポートしながら、アーティストと、起業家や社会との新しい関わりや相乗効果を生み出すことに関心を持っている。
Impact HUB Tokyo ARTS 牛木匡憲Solo Exhibition VISITORS

起業家のベースキャンプ「Impact HUB Tokyo」において、新たにスタートする、アーティストがコミュニティと繋がりながらインパクトを生み出すプログラム「Impact HUB Tokyo ARTS」の第一弾として、HUBメンバーとして在籍をする牛木さんの展覧会を7月17日からスタート。

7月22日の土曜には、スペシャルゲストの高橋キンタローさん、水野健一郎さん、師岡とおるさんを招き、トークイベントも行います。イベントURL: https://goo.gl/jWGCH2
展覧会の日程は、7月17日〜7月30日まで。
ぜひいらしてください!

【詳細情報】
期間:7月17日〜7月30日
場所:Impact HUB Tokyo(東京都目黒区目黒2−11-3 印刷工場1階)
営業時間:11時−19時 ※22日のみ、トークイベントのため17時まで


7/22 牛木匡憲 × 水野健一郎 × 師岡とおる× 高橋キンタロー トークショー
17:00スタート
イベント定員:先着50名
イベントURL:https://goo.gl/jWGCH2

執筆者情報

岩井 美咲
株式会社Hub Tokyoの初期より参画し、現在はCommunity and Entrepreneurship Program Managerを務める。
主に創業当初のスタートアップ・起業家のサポートのため、様々なリソースやセクターのコネクターとして活動している。近年では東京以外の地域でのインキュベーションプログラムも実施しつつ、多様な文脈やエコシステムの中での起業家へのサポートのあり方を考える。

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