写真元: SOCAP16 Blog
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世界最大規模の社会的インパクト投資のカンファレンス「SOCAP(正式名称: Social Capital Market)」が今年も9月13日〜16日の4日間に渡り開催される。

毎年選び抜かれた最先端の8つのテーマに沿って、様々な議論が繰り広げられるSOCAPだが、今年から新たに追加された「Inclusive Entrepreneurship」について特に注目が集まっている。

Inclusive Entrepreneurshipとは、直訳すると「包摂的起業家精神」と呼ばれ、今までスタートアップや起業家などの文脈だけで議論されがちだった「起業家精神」を国籍、人種、セクターを超えてより多様な分野において広げ、育てていこうというものだ。

今回、その一例としてアメリカの州をまたぎ起業家精神とは程遠いと思われがちな刑務所で起業家育成を行う「Defy Ventures」についての記事を取り上げていく。

※この記事は、2016年9月13日-16日で開催される社会的インパクト投資の最大規模のカンファレンスSOCAP16の公式サイトで公開されているブログ記事を翻訳してお伝えしている。【原文】

 

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世界で一番好きな場所ときかれたら、あなたは何と答えるだろうか?

刑務所の受刑者たちからアントレプレナーを養成するDefy Venturesのファウンダーのキャサリン・ホーク氏(以下ホーク)は迷わずこう言うだろう。刑務所です。と。

ホークは、現在ボランティアスタッフ3000人を抱えながら、順調に成長を続ける社会的企業「Defy Ventures」を経営しながら、なるべく頻繁に刑務所に向かうようにしている。彼女のパッションの根元にあるのは、社会的構造そのものにはびこる、特定の人種や貧困層への差別によって、不公平な判決をうけて増えている投獄者たちへの想いだ。また、アメリカでは、収容される受刑者人口の増加が社会問題となっている。

Defy Venturesでは、革新的なビジネスモデルを作り出し、犯罪歴のある人々の人生を変えると共に、全国的に再犯率を減らしていることで注目を集めている。

 

受刑者たちのアントレプレナーシップを養い、コラボレーションを通じて犯罪歴のある人たちの人生を変える

DefyVentures5刑務所に収容されている人々の多くは、彼らの間違ったロールモデルの存在、恵まれない生活環境によって、違法なビジネスを運営していることによって、逮捕されていることが多い。

Defy Venturesでは、この状況をポジティブに転換させるプログラムを提供する。プログラムでは、受刑者たちの可能性や、正当なアントレプレナーシップを引き出し、ビジネス教育や、生きるためのスキルトレーニングを、収容中に提供する。

釈放されるころには、今度は雇用プログラムに参加し、メンタリングを受け、投資・スタートアップ向けサービスを受けられるアクセラレータプログラムに参加することができる。プログラムに入ると彼らはトレーニング中アントレプレナー(以下EIT)と呼ばれる。

 

事業範囲は州をまたぎ、全国的な展開へ

DefyVentures6インタビュアー: 昨年10月のSOCAP15から、事業展開として新たな動きはありましたか?

ホーク: 1年前までは、Defyプログラムは釈放後のプログラムでしかありませんでした。しかし、彼らの変化のプロセスは刑務所内の収容中も必要だということに気がつきました。

現在刑務所内において、Defyプログラムをスタートして約1年たちますが、全国的に展開するまでになり、現在は、NY、カリフォルニア、ニュー・ジャージーの州立・連邦それぞれ計13の刑務所で展開してしています。また、現在は少年院の受刑者も対象に含み、18の州で釈放された人々へプログラム提供しています。

リハビリを重要視する見方は当たり前のように感じるかもしれませんが、残念ながら、
多くの刑務所は未だに刑罰に重きをおき、リハビリテーションを軽んじています。

 

刑務所の受刑者数の増加による州の財政難を克服するきっかけとなるか?

DefyVentures1

Defyの動きには、公的機関も関心を寄せている。
カリフォルニアに拠点をおく「カリフォルニア州立更生リハビリテーション機関(CDCR)」は、このプログラムの積極的な導入を望んでいる。

彼らの協力によって、現在カリフォルニアでは、11の刑務所においてプログラムを展開している。

ホーク: 私たち現在期待していることは、私たちのパイロットが、慈善事業として資金提供され、州が価値を見出し始めることで、金銭的な責任感を感じてくれることにあります。州は、1人の受刑者を収容するのに、大金を支払っています。

例えばカリフォルニア州では、1人を収容するのに、1年間で約485万円も支払っています。Defyでは一人がプログラムを受けるのに約51,000円程度に収まり、再犯率に関しては、3.2%にまで抑えていることから、社会的インパクトとしての投資対効果を明確に数字として持っています。

そのため、今回のCDCRから、刑務所関連施設からの初の投資を受けられたことは、Defyとしては大変意義のあることで、今後も私たちが持続可能な事業をすることに対して、非常に価値のある出来事となりました。

 

ボランティアスタッフ、受刑者、Defy Ventureに関わる全ての人にとってのインパクトとなるプログラムであること

DefyVentures4インタビュアー: Defyプログラムがボランティアスタッフ、EITの両者にとってどうインパクトになっているか、具体的に教えていただけますか?

ホーク: よく刑務所でこのエクササイズをやります。ボランティアスタッフが、部屋の壁の片側へ横一列に並び、EITたちは、反対側に同じように横一列となります。私は、いくつかの文を用意し、それを全員の前で読み上げます。この内容を聞いて自分にあてはまると思う人は、一歩前にでます。

・私は自分自身を許したことがない
・私は、私を傷つけた人を許したことがない
・自分や、他の人を許さないことが、今日までずっと自分を傷つけている

すると、ほとんど全員が一歩前にでるのです。
EITも、ボランティアも似ています。そして私はこう言います。「もしそれがあなたをまだ傷つけているのなら、何があたた自身やその他の人のことを許すことを妨げているのですか?それとも、許し方がわからないのですか?」

Defyでは、ボランティアスタッフ・EITの両者に向けて、許すことについてのコースがたくさん用意されています。

物理的に刑務所で拘束されていたとしても、なぜあなたの感情までも拘束することを選ばなければならないのでしょうか?私たちは、私たち自身を自由にする選択肢があるのです。

 

持続的に社会的インパクトを生み続けるためにこそ、持続可能なビジネスモデルをつくる

DefyVentures2インタビュアー: Defy Venturesのこれまでの収益源はほとんどが寄付や助成金を土台にしていましたね。ただし最近は新たに革新的な収益源を開発していると聞いています。具体的にお伺いしてもいいですか?

ホーク: 最近は助成金以外に、釈放後のEITから、メンバーシップフィーとして、月に約1万円程度支払ってもらう仕組みを取り入れました。彼らのフィーは、現在収監されている人たちにとってのプログラムのスカラーシップとして還元されるようになっています。

私たちはこれを「恩返し」プログラムと読んでおり、この仕組みを導入したことによって、EITたちが目的をもつようになり、成果を出すための自己投資という風に捉え、よりコミットメントをあげることにつながりました。

現在は、物理的に参加するプログラム以外に、Defyプログラムの「Amazonバージョン」のようなものをプロダクト化しており、収監されている人たちの家族や近しい人たちが、このDefyのオンラインカリキュラムを購入し、プレゼントとして受刑者にあげることができる仕組みをつくろうとしています。

また、今後は、全てのプログラムを卒業すると、Baylor大学のMBAプログラムの修了書が手に入るようにできればと思い、現在動いています。

 

アントレプレナーシップが自分を変えるための包摂的な機会を生み出す

DefyVentures7インタビュアー: アントレプレナーシップは、Defyが打ち出すソリューションの核となっていますね。ご自身もアントレプレナーとして、またたくさんのアントレプレナーを指南してきた人物として、よい世界を生み出すためにアントレプレナーシップがもつ役割についてお話いただけますか?

ホーク: アントレプレナーシップは、素晴らしいイコライザーだと思っています。経済的な地位、肌の色、経歴に関わらず、誰でもアントレプレナーになることを選ぶことができます。

私は、アントレプレナーシップと、競争をツールに、人々の最も良いところ引き出し、それだけでなくつなげることができると思っています。

Defyのボランティアスタッフと、EITたちは、アントレプレナーシップがなければおそらくつながることもなかったしょう。

アントレプレナーシップへの愛は、Defyの3000人のボランティアスタッフと、EITを惹きつけるものです。私たちはアントレプレナーシップを活用して、収益を生み出すビジネスを創り上げるためだけでなく、包摂的な変革の機会を創り出そうとしているのです。

 

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お問い合わせ: socap [at] hubtokyo.com
担当: 岩井

執筆者情報

岩井 美咲
株式会社Hub Tokyoの初期より参画し、現在はCommunity and Entrepreneurship Program Managerを務める。
主に創業当初のスタートアップ・起業家のサポートのため、様々なリソースやセクターのコネクターとして活動している。近年では東京以外の地域でのインキュベーションプログラムも実施しつつ、多様な文脈やエコシステムの中での起業家へのサポートのあり方を考える。

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