2016年4月28日木曜夜、目黒の印刷工場跡地のアントレプレナーのベースキャンプImpact HUB Tokyo(株式会社Hub Tokyo)で、約1年4ヶ月ぶりとなる起業ピッチイベント「SparkPlug」が開催された。

日本で衰退する伝統工芸の職人支援や、昨今の待機児童問題以降、その質や内容が急速に深刻な問題とみられている保育事業や学童事業などに対応する、社会課題解決型ソーシャルビジネスの起業家も登壇。

また一方で、情報飽和時代における「決定の取捨選択」を提案するデバイスという、まさにミレニアム世代のライフスタイルに呼びかける商品も。

そして、ここ1年、「オープン・イノベーション」の加速が各企業で叫ばれるが、そこに強力な助っ人となるサービスを提案する起業家も登壇した。

 

このピッチイベントは、Impact HUB Tokyoが行う起業家育成プログラム「Team360」の集大成として開かれるものであり、今回もプログラムの7期生から3チーム、加えて、起業家育成プログラム外からも、Impact HUB Tokyoのメンバーである2チームが出場した。

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登壇した起業家にとって、このピッチイベント「スパークプラグ」とは、今後行っていきたいビジネスプランを発表し、共感を持つ人々を増やすことで、彼らのビジネスを実現するために必要となるリソース(ノウハウ、ネットワーク、資金など)とプラグインする機会だ。
そのため、これは起業家育成プログラム参加者の集大成というだけでなく、その後事業創造を加速していくためのあらたな出発点でもある。この場所で、生まれたつながりは、未来のお客さんにつながったり、投資家であったり、はたまたチームに加わり働いてくれるようなスタッフとなるかもしれない。

 

多様なバックグラウド・ビジネスプランを持ったピッチャー陣

今回ステージで熱いピッチを繰り広げたピッチャー陣を以下で、紹介していく。

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『動画作成アプリで、日本全国の職人を元気にしたい』

水木 ユキ(みずき ゆき)さん (Time and Design)

サービス名「SHOKUNIN」

1st ピッチャーを務めたのは、Time and Designの水木さん。現在は、東京でプロダクトデザイナーをしており、起業準備をしつつ今月末には会社をやめ、拠点は京都に移す予定だ。
京都生まれの水木さんは、親戚に染物職人がいる。日本全国の伝統工芸の職人業界では、若手が減り、深刻な後継者不足と、経営難に苛まれている現状がある。

デザイナーである水木さんは、デザインの力を使って彼女ができることを考え、まずは風呂敷のデザインから関わることにした。ただ、表面的にどんなに凝ったデザインにしても、多くの生活者は、その伝統的なものづくりの作業工程を知らない。伝統工芸の職人さんは、未だに機械の手に頼らず、人間の手仕事で成し遂げている技の数々がある。しかし、残念ながら、作られている工程が見えないため、高額の商品のワケを理解できずに購入までに至らないことを知る。

実は、その作業工程こそ、彼女が実際の工房をみて面白さを発見したことだった。

このような作業工程をより手軽に職人の方々が発信することができたら、もっともっと伝統工芸へ興味を持つ人が増え、職人の人々が元気になるのではないか、そんなことを思い開発したのが職人に特化した動画作成アプリ「SHOKUNIN」である。

アプリ上では、簡単なガイダンスにしたがって、誰でも簡単・手軽にスマートフォンを使って動画が作ることができる。この動画は、そのまま職人が活用したりできるようになっている。

6月からは、クラウドファンディングプロジェクトを立ち上げ、アプリ開発費を調達予定。現在は、これから一緒になってプロダクトを作っていってくれるアプリ開発者を探している。

 

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『親も子供も、思い込みや固定観念に縛られない共育を行う幼稚園をつくりたい』

伊原 尚郎(いはら ひさお)さん 

サービス名「東京チルドレンズガーデン」

次にステージにたったのは、東京チルドレンズガーデンのコファウンダーの伊原さん。伊原さんは、3年前までは、約20年間のアメリカ生活があり、Hisao Iharaとしてビデオ・アーティストとして活躍しているアーティストでもある。そんな彼が幼児教育に興味を持ったきっかけは、母親が経営していた幼稚園の園長先生を任されたことである。しかし、北海道の郊外で比較的な保守的な地域であったこともあり、なかなか自分の本当にしたい教育ができずにいた。

そんな折、現在のコファンダーである西ケ谷アンさんと出会い、今回の幼児教育施設「東京チルドレンズガーデン」を立ち上げることを思い立った。

現在ある職業の約65%が、将来的に存在しなくなると言われていることからも、現在では予期せぬ出来事や、複雑に入り組んだ問題が発生することは多分に考えられる。その時に必要となってくるのは、一人一人が自分の軸をもち、考え続けることである。

東京チルドレンズガーデンでは、子供達に強制的にしつけや詰め込み教育を行うのではなく、子供達の特性や性格を探りながら、必要となる問いを立て、子供達のやる気を引き出す教員を育てるラーニングセンターとしても昨日する。現在、幼児教育施設の設立のため、教員となる人や、資金などの協力者を募集している。

 

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『面白く、社会的にインパクトのあるアイディアを埋もれさせない仕組みをつくる』

田中 辰也(たなか たつや)さん (株式会社STYZ(スタイズ))

サービス名「SCIPHER(サイファー)」

中盤は、株式会社STYZのコファウンダーである田中さんが登壇した。彼らは、実はちょうど開催日当日に銀行の融資がおりたことで、胸をなで下ろしたところだった。

彼らが立ち上げるSCIPHER(サイファー)というサービスは、人の生まれ育ちや置かれた場所に関わらず、個人として社会にインパクトを与えるアイディアに共感する人々のコミュニティを形成し、アイディアをきちんと形に昇華させる仕組みを開発している。

SCIPHERでは、共通の目的を持つ個人がコミュニティを形成し、アイディアが実現化するまでのプロセスをガイドするプラットフォームだ。コミュニティは、アイディア出し、リサーチ、投票などのフェーズを経て、最終的なアウトプットまで走っていく。

現在彼らは、このコミュニティからアウトプットを生み出す仕組みを企業内の新規事業担当者などと共にプロトタイプとして走らせることを目指している。

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『まちの大人を巻き込み、地域で働く親の子育てをサポートするエコシステムを生み出す』

本多 智子(ほんだ ともこ)さん (親子時間ラボラトリー)

サービス名「まちかどコーヒー 放課後ラボ」

働く母親として子育てする中で、感じていた行き苦しさや、罪悪感。これらを取り除き、自分だけでなく同じまちに暮らすほかの大人が加わり、地域が面となって子育てをサポートすることで、もっともっと子供は自由に、自立してのびのびと育ち、母親たちもいきいきと働き、子育てをすることができるのではないかー。そんな思いで、起業家プログラムの説明会に臨んだ本多さんと出会ったのは、今年1月末のことだった。

その頃は、6月まで下の子の育休中の本多さんが、復職するのか自分の本当に変えたいことに取り組むのかという狭間にいるということで、内に秘めた静かな闘志・怒りをひしひしと感じたのを覚えている。

ピッチイベント当日、登壇した本多さんの表情は、3ヶ月前の表情とはうって変わって晴れ晴れとした顔をしていた。

彼女たちが立ち上げるサービス「まちかどコーヒー 放課後ラボ」は、小1・小2の子供をもつ働く親に向けて提供するサービスだ。幼稚園や保育園で親の仕事が終わるまできちんと面倒を見てくれる屋根は、小学校に上がった瞬間に消えてしまい、既存の学童保育システムも厳しい選考基準がある上、子供がやめてしまう危険性がある。そこで考えたのが、コーヒースタンドと学童を合わせた「まちかどコーヒー 放課後ラボ」である。

最大の特徴は、ここに来るのは、子供だけではなくまちの大人も含めているということである。コーヒースタンドとして、子供のいない若い世代を含めて様々な層の大人が集まってくる。また、子供達は哲学カフェや、探検ぼくのまちなどといったまちと結びつきを深める活動を通して、多くの大人の姿をみて成長をしていく。

現在は、カフェとなるような場所を探している最中だが、しばらくはその場所を見つけるまで、プログラムのプロトタイプを走らせながら、一緒にプログラム提供をしてくれるような協力者を探している。

 

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『日々の目標をもっと簡単に、直感的に楽しみながらクリアするためのプロダクトをつくる』

神谷 憲司(かみや けんじ)さん (株式会社WHITE)

プロダクト名「Progress」

最後にピッチを披露したのは、インターネット × ものづくりで新しい体験を生み出す株式会社WHITEの神谷さん。これまでには、VRを可能にするダンボール製のゴーグルにタッチインタフェースを追加したMilbox Touchで今年3月に米国テキサス州で行われたSXSWというカンファレンスで、日本からの出場チームで唯一ファイナリストに選ばれたりと、現在勢いのあるスタートアップだ。

今回は、WHITE Inc.からの新製品の発表ということで、プログレスバーのようなインターフェースでわずか0.1秒で目標までの進捗を確認できる「Progress」を紹介した。携帯と同じくらいのサイズで、バーだけが浮かび上がる。小さい頃、母親に「宿題しなさい」と口うるさく言われて、やる気をなくした経験はないだろうか。現在は母親のように口うるさくいう人は近くにいないが、その代わり、様々なタスク管理ツールが出回り、その多くが定着していないような気がしている。母親とタスク管理ツールの共通点は「締め切りギリギリに言ってくる」ということだ。

「Progress」はある種リマインダーを送る機能ではなく、車のスピードメータのように、目標までのペースメーカーとして機能してくれる。目標は、プロジェクト業務から、娘の誕生日や、漫画の発売日など、用途は多様だ。今後はAPI連携で様々なアプリとの提携をしていく予定で、近く、クラウドファンディングキャンペーンもスタートする。要注目なプロダクトである。

 

共感を呼ぶピッチが、今後の起業家たちの糧となる

IHT_20160428_Spark-Plug_GH4P1000288スパークプラグについて、よくいただく感想が「ほかのどのピッチイベントよりも共感を呼ぶピッチがきけた」ということである。
ほかのピッチイベントでは、主にプロダクトの仕様(スペック)や事業のマネタイズについての説明など、どちらかというと「説得」するための素材がプレゼンテーションに多く含まれる一方、スパークプラグは、その起業家が独自にもっている「なぜ、その事業なのか」という「共感」を呼ぶストーリーを多分に含んでいる傾向がある。

 

 

そのため、ピッチャー自身も、今後事業自体がピボットする時点がきたとしても、自分の中で磨かれた軸をもとに、柔軟に動いていくことができる。

共感を呼ぶピッチは、今後もその事業を応援し、見守ってくれるフォロワーを作るための最大の武器だ。それは単純に資金を出してくれる人だけでなく、事業の最初の顧客になったり、自分のコミュニティにおすすめしてくれる人など全体を含めたコミュニティを形成していくことにもつながる。

 

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今回ピッチした起業家が、これからどう羽ばたいていくか、今から楽しみである。

なお、今回のピッチャーたちが参加していた起業家育成プログラム「Team360」のブートキャンプ版は、今年9月開始を予定しているが、それより前に短期間版の「Team360 3DAYS CHALLENGE」を2016年6月24日、25日、26日の開催を予定している。

詳細はこちらで5月上旬公開予定: http://www.team360.impacthub.tokyo/

お知らせを受け取りたい方は、こちらにぜひ登録を。https://team360.doorkeeper.jp

 

次回のスパークプラグは、今年12月を予定している。是非引き続き、注目してほしい。

こちらも次回予告を受け取るにはこちらからぜひ登録を。https://hubsparkplug.doorkeeper.jp

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