Impact HUB Tokyo

MEMBERS2017.07.10

【インタビュー】アートとイラストレーションの境界線、その先に見えるもの <前編>

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2017年7月17日からImpact HUB Tokyoにて、メンバーのアーティスト牛木匡憲(以下:牛木)さんがコミュニティと繋がる個展を開催する。Impact HUB Tokyoのイベントホストであり、自身もグラフィックアーティストとして活動するシマジマサヒコがインタビューをした。


アーティストが描くイラストレーションの付加価値

-まず、皆さんに牛木さんがどんなことをやっているのかご紹介したいと思いますので、普段職業として何をしているかや、現在の活動状況など簡単に自己紹介をお願いします。

牛木:一言で言うのも難しいですね(笑)

-職業はイラストレーターということになりますか?

牛木:はい、収入源ベースでいえばイラストレーター…ということになるのかな?

ただ、イラストレーターを名乗った場合での仕事と、アーティストという付加価値をつけてのイラストレーションの仕事では全然種類がちがうので、一応職業的にはアーティストとしてやっています。

-では、今回の個展に関してもイラストレーターというアイデンティティよりも、アーティストとして知らしめるほうがふさわしいという感じでしょうか?

牛木:僕の場合は普段子育てをしているという事情で、いわゆる売れているイラストレーターの方がやるようにガリガリ作品を量産できない状況があります。であれば、現代アートの作家が描くイラストレーションのほうが、金額的にはそう変わらないかもしれませんが付加価値があるようなイメージがある。だから、そうした時間的な制約と、将来的に自分の作品が消費されていくにしても、もう少し価値のある消費のされ方をしてほしいという気持ちがありまして(笑)、どちらかといえばアーティストがクライアントワークのイラストレーションを請け負っているというテンションでいます。
ただ今後私生活の状況が変わって、子供が大きくなったらイラストレーターを名乗ったほうが仕事が回しやすいかもしれません。とはいえ、イラストレーターとしてバンバンやってゆくと、どうしても流行り廃りのある世界で長くて3年ぐらいでもたなくなるようにも見ています。まあ、それは現代アートの世界でもあることではありますが・・・。なので今後どうやっていくかは、見極めつつ臨機応変にやっていこうと。

もしかしたら、現代アート一筋でやっている人には大変失礼になっちゃうかもしれないんですが、僕の場合はプライオリティが違っています。ビジネスの後にアートがあって、彼らの場合はアートの次にビジネスがあるのかもしれない。そのあたりは根本的に考え方が違うので、仮に失礼に思われることがあろうとも、僕はそういうやり方を通していきたいと思っています。

-今までにやった中で、何か代表的なお仕事をご紹介してもらえますか?

牛木:代表的なところでいうと、昨年(2016年)の伊勢丹のクリスマスキャンペーンの仕事です。40名ぐらいのアーティストが参加しており僕は新宿伊勢丹本店のキャラクターを担当しました。

Impact HUB Tokyoはクライアントワークを客観視できる場所

-牛木さんはImpact HUB Tokyoを利用しているメンバーでもあるわけですが、いつ頃からいらしゃっているのでしょうか?

牛木:ちょっと記憶が曖昧なところもあるのですが、大体2年ぐらい前からですかね。

-ここを利用する目的やきっかけはどういうものだったのですか?

牛木:子供がいることもあって、自宅で仕事ができない状態のときに利用するというのも一つにはあります。

あと、絵描きやイラストレーターは引きこもりがちなので、直接関わらないにしても周囲に仕事をしている人がいる状況で仕事をしているとこちらも触発されるというか…

実際には誰も見ていないにしても、こちらが頑張っている姿を見てもらっている感みたいなものが重要な気がするというか…

なんかうまい言い方ないですかね?(笑)

仲間内すぎるとつい喋ってばかりになっちゃうし…。

-適度な緊張感や距離がありつつ、人がいる安心感みたいなものも感じながら仕事できると?

牛木:そうですね。一人でいると無限に心配や不安が膨らんでいってしまって…。例えば、休み時間とかにテレビのワイドショーとか見てしまったりして、大丈夫かな?なんて(笑)。無駄に自分の将来やら、もっとマクロに地球の未来のことなんか考えてしまって、どんどんネガティブになっちゃったりするんですが(笑)

自分が絵を描く意味もよくわからなくなってきちゃったりとか…考えなくてもいいことばかり考えたりして。

-ある意味アーティストっぽいお悩みですよね。

牛木:それがこういった場所に来ると絶対にないんですよね。客観的に取り組めるというか。アーティストはどうしても自分を探しながら作業するところがあるので、本来キャンバスに向かう場合は一人のほうがいいんですけど、クライアントワークをやる場合には客観視が必要になるので、ここでの作業はそういうことには向いていますね。

そういう意味ではいわゆるアーティストがこういう場所を使うことはないのかなと。デザイナーやイラストレーターさんのほうが、ある程度こういう場所にいてやりやすいかと思います。

アートにビジネスとしての結果を求める理由

-今回、Impact HUB Tokyoの本格的なアートプロジェクトの第一弾として個展を行われるわけですが、このプロジェクトにいたる経緯を教えていただけますか?

牛木:普段Impact HUB Tokyoには週に一回か二回ほど来ているのですが、あるときメンバーランチに参加していて、Impact HUB Tokyoの共同創業者のポチエさんに我が家に余っている作品がいっぱいあって、捨てようと思っているポスターがあるのでよかったら差し上げますという話があったんです。

以前からアートや音楽に大変興味があるということを聞いていたので、「見たい、欲しい!」と言ってくれてコワーキングエリアに貼り出してもらいました。展覧会には創業者の槌屋さんも来てもらえて、よくよく話してみれば槌屋さんがImpact HUB Tokyoでギャラリーやることを以前から熱望しているというお話を伺ったんです。

ポチエさんのほうには、Impact HUB Tokyoをよりクリエイターが集まるようなスペースにしたいという想いがあるということで、意気投合し、展覧会をやらせていただくことになりました。

ただ、それに関してはちょっと不安な思いもあるというか。Impact HUB Tokyoにとって具体的なKPIに反映されるようなベネフィットがないとこちらとしては、やらせてもらって申し訳ないという実感になっています。

-そういったお話を聞くと意外ですが、アーティストである牛木さんのほうが逆にビジネス的な結果を意識しているんですね。

牛木:じつは僕としてはアートやイラストレーションの界隈でありがちな、なあなあにしてやっている現状が好きではないんです。それだったらやりたくないぐらいに思っていて、ちゃんとビジネスとして成立して儲かってくることが見えてこないと、さすがに生活ができないなという意識があります。

-ということは、それはご自分のプロフィットとしての結果がほしいということなんですか?

牛木:それもそうですし、同時に業界への思いも結構あって…。僕の若い頃とても輝いて見えたアーティストの世界を目指して進んできたわけですが、自分が実際その世界に入ってみるとみんな儲からないというか、お金の動きの鈍さみたいなものが見えてきて…。もちろんうまくいっている人もいるとは思うのですが、全体的に他と比べて優位性のない中でのし上がっていくのは、なんかもう絵や作品がよければいいという問題ではなくなっているなあと。結婚とか子供とか、そういったものを全部諦めて没頭できる人しか続けられないような状態は良くないなと思って。

-なるほどー。そういう意味では、ビジネスライクとまではいかずとも、それなりのビジョンを持って活動なさっているんですね。ちょっと珍しいタイプのような気もします。

牛木:じつはアートに関しては3回か4回は諦めていて、今は4回目か5回目の挑戦で4年目という感じで、今回もいつ諦めてしまうかわからないんですが…。
そういう挫折があったからこそその辺りは深く考えているというか。
自分勝手に好きなものを作るみたいなことは目標に持ってはいけない、それは違うなと。

過去には結構鬱々と悩んでいる時もあって、なんでやっているんだろうかとか、僕の描いている絵は僕が嫌っている絵と大差があるんだろうかとか…。だから、自分のやっていることにちゃんと正当な理由を持たないとやっていけなくなってしまったんです。

-つまり、ご自分である種のフラッグを立てることによって、そこに向かって行くことで、作風なり指針なり決めてゆけるというようなことでしょうか?

牛木:そう、そうですね。作風ということに関してはまさに、ちょっと予期せぬ部分でもあるんですが、あー作風というのはそういうふうに決まっていくものなんだなと、後から思う部分はありました。

例えば僕はファイターとか、強いヒーロー像を描いているんですが、そういったものには一般的に武器が出てくるんですが、「いや、武器は描かない」みたいなポリシーが生まれてきたりして、そうしていくと絵が強固になっていくんです。ふにゃふにゃとしたものではなくそれなりの理由が付いてくる。まあ、そういうのも後付けではあるんですが。

-でもそういった中から、今のキャラクターが生まれて来たのは確かなんですね。

牛木:そうですね。なにか人を楽しませたいとか、驚かせたいとか、そういうサービス精神の塊みたいな…それの抽象化みたいな(笑)。それを自分のキャラクターを媒介としてそういう形につなげられたら、というのもあります。

それもこれも、ただ夢見心地で言っているだけではなく、ちゃんとビジネスとして結実するバランスを持っていかないと、僕がそういうことをダラダラ展開していて若い人の目を引いていってしまって、それに下手に憧れられたりするとまた悪影響を及ぼすみたいな(笑)

>>アートとイラストレーションの境界線、その先に見えるものとは<後編>へ続く

 


牛木匡憲(うしきまさのり)
1981年生まれ。武蔵野美術大学卒業、文具メーカー、ウェブ制作会社、ゲームグラフィッカーを経て現在アーティストとしてイラストや展覧会などを通して国内外で活躍中。NHK Eテレ『シャキーン!』や伊勢丹新宿店クリスマスキャンペーン、TOYOTAカローラ50周年ムービー出演、サーマソニックでのライブペインティングなど。イラストレーション、広告、イベント、映像、SNSなど様々なジャンルでその存在感を発揮している。http://www.ushikima.com/ 


島地正彦(しまじまさひこ)
カタカナ表記のシマジマサヒコ名義で、イラストレーター/グラフィックアーティスト、ミュージシャン/ベーシストとしての活動を行なうアーティストである一方、Webやグラフィックのデザイナーとして合同会社(PLUCK Creation, LLC)を設立し運営しているマルチクリエイター。IHTのホスト業務をサポートしながら、アーティストと、起業家や社会との新しい関わりや相乗効果を生み出すことに関心を持っている。



Impact HUB Tokyo ARTS 牛木匡憲Solo Exhibition VISITORS 

起業家のベースキャンプ「Impact HUB Tokyo」において、新たにスタートする、アーティストがコミュニティと繋がりながらインパクトを生み出すプログラム「Impact HUB Tokyo ARTS」の第一弾として、HUBメンバーとして在籍をする牛木さんの展覧会を7月17日からスタート。

7月22日の土曜には、スペシャルゲストの高橋キンタローさん、水野健一郎さん、師岡とおるさんを招き、トークイベントも行います。イベントURL: https://goo.gl/jWGCH2
展覧会の日程は、7月17日〜7月30日まで。
ぜひいらしてください!

【詳細情報】
期間:7月17日〜7月30日
場所:Impact HUB Tokyo(東京都目黒区目黒2−11-3 印刷工場1階)
営業時間:11時−19時 ※22日のみ、トークイベントのため17時まで


7/22 牛木匡憲 × 水野健一郎 × 師岡とおる× 高橋キンタロー トークショー
17:00スタート
イベント定員:先着50名
イベントURL:https://goo.gl/jWGCH2

 

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