Impact HUB Tokyo

STORY2016.09.26

研究者×アントレプレナーで既存の壁を壊す、フランス発「BeyondLab」日本上陸

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フランスで始まった研究者たちのムーブメント「beyond lab」。日本でムーブメントを率いるのは、仏・グルノーブルで創業者の2人に出会い、立ち上げ当初から彼らの成長を見てきている田畑俊行さん。記念すべき第一回目のBeyondLab TOKYO(場所:Impact HUB Tokyo)のイベント開催に先立って、田畑さん(以下 敬称略)に、Impact HUB Tokyoの岩井がインタビューを行った。


写真提供: BeyondLab

始まりは博士課程の学生二人のちょっとした勇気だった

フランスの都市「グルノーブル」は、様々な研究機関、大学、発電所、企業などが集結する日本でいう「つくば」のような場所だ。街自体の規模がそこまで大きくないからこそ、飲み屋やカフェにいくと知っている顔によく遭遇する。

この場所で、二人の学生Xavier Blot、Raphaël Meyerによって「BeyondLab」は始められた。二人の課題意識は、研究者のキャリアパスの狭さ、選択肢の少なさだった。研究者が最も時間をつぎ込んでいるのは紛れもなく研究だ。それ以外のこと、例えば「会社を立ち上げる」など言い出したら、真面目に研究をしろ、と出鼻をくじかれてしまう。そんな研究者を取り巻く固定観念を打ち砕くために、創業者の二人は草の根で、「BeyondLab」を立ち上げた。

起業家だけでなく、公務員、教員、主婦、アーティストなど様々なバックグラウンドを持つ人たちを巻き込み、研究者の研究のシード(種)をビジネスプランに発展させる活動をしてきた。それは多くの人に受け入れられ、現在フランス・スイスの2カ国、述べ1200人を動員し、100件以上の研究案件にインパクトを与えてきている。

その「BeyondLab」が東京にやってくる。

ムーブメントを率いるのは、グルノーブルで創業者の2人に出会い、立ち上げ当初から彼らの成長を見てきている田畑俊行さんだ。記念すべき第一回目のBeyondLab TOKYOのイベント開催に先立って、田畑さん(以下 敬称略)に、Impact HUB Tokyoの岩井がインタビューを行った。

岩井 まず、田畑さんの簡単なこれまでの経歴を教えていただけますか?

田畑 現在は、パリに拠点を置くフランスの会社で技術コンサルの仕事をしています。その前は、東京大学大学院の修士課程で材料工学を勉強し、そのまま博士号を取るまで研究していました。

ただ、当時日本の中で研究者をやっていくことを考えた時、キャリアパスが限られていることを目の当たりにし、このままでいいのだろうか、と思ってしまったのです。また、同じ大学の中で研究をやっている仲間や、若手の先生方、もちろん自分自身もそうだったのですが、皆、確かに研究自体を心から楽しんではいるものの、大学の雑務や、論文執筆のプレッシャーから、私生活まで犠牲にして働いている印象を受けていました。

そうしたことが積み重なって、博士課程の終りが見えた頃、一度違う社会の中で、研究活動に対してどのような距離感を持っているのかを肌で感じてみたくなり、海外に行くことを決めたのでした。当時指導して頂いていた先生の推薦もあって、いくつか候補があったのですが、縁あって、フランスのCEAという国立研究所(グルノーブル)で2年間博士研究員として勤務する機会を頂きました。


写真提供: BeyondLab

日本の研究者を取り巻く環境を変える起爆剤になりたかった

岩井 なぜBeyondLab TOKYOをやろうと思ったのでしょうか?

田畑 グルノーブルの地で、同じ研究機関にBeyondLab創業者の二人がいたこと、また、僕自身が研究者であったということは大きいと思います。彼らと同じラボにいたことで、毎朝カフェの時間にいろんな話をする間柄になり、フランス国内で 彼らのプロジェクトが育っていく様子をすぐ側で知ることに繋がりました。

最初の頃は、「ローカルなコミュニティの活動だし、ムーブメントにはならないだろうな」と思っていたのですが(笑)、彼らのイベントに足を運んでみると、若手からプロまでの研究者をはじめ、心理学者、哲学者、デザイナー、アーティスト、メディアと・・・とにかくいろんな人が集まってきたんです。単純に興味があって来ている地元の人もいました。

そこで、「あ、そうか、みんなそういうものを欲しがっていたけど、行動を起こす人がいなかっただけなんだ」と(笑)。

かなり私見の入った一般化かもしれませんが、もともとフランスの文化の 中で育ってきた人たちは、それが何であれ「議論」と言うものが、三度の飯より大好きな人たちです。加えて、科学に対する市民の興味も大きい。XavierやRaphaëlたちのアクションに加えて、そうした文化的な背景や、グルノーブルに近いリヨンで推進されていたスマートシティの話題など、すべてが良いタイミングで一つになって、ある種の起爆剤のように機能したのだと思います。

また、これもフランスの面白いところなのですが、やると決めたら一気にやる。(移民政策などのように)ときに行き過ぎることもあるかもしれませんが、とにかく物事をやると決めたら(決めるまでは延々と議論をしていますが)その時のスピードには驚きます。


写真提供: BeyondLab

岩井 実際にBeyondLabを通してどんなことが起きているのですか?

田畑 自分も何回か参加したことがあるのですが、とても簡単に言ってしまうと、研究者が日頃の研究活動で得られた技術や知見を持ってくると、実際にビジネスを創る仕事をしている人たちもそこに来ていて、お互いの間で話をするだけです。ただ、うまく話が進むようにサポートはします。そうすると、あれこれと違った視点から議論を重ねるうちに、その技術が真剣にビジネスにつながるものとして考えられるようになる。

例えば、博士課程の学生は、時々なんのために研究しているのかわからなくなってしまう時があります。研究室によっては、指導教員の意見が絶対だったりしますよね。自分がアイデア(研究の出口)を考えることをやめてしまうと、そのようになってしまうと思うのです。

彼らにとって、BeyondLabのイベントにいくことで、改めて自分が何のためにその研究をやっているのか、その意義を見つめ直すきっかけになる。そこから、新しいモチベーションに繋がったり、スタートアップが生まれるきっかになったりしています。


 

研究者目線で考えることの可能性

岩井 なるほど、それを日本でやってみたいと思うようになったのですね。

田畑 そうです。日本で、特に同世代の研究者をみていると、みんな本当に大変そうなんですよ。BeyondLabのアクションを持ち込めば、辛い修行のように人生を削るだけではない、もっと多様性のある研究への関わり方を生み出せるのではないか、と思ったんです。

世界的にみて、日本の研究成果や技術は多くの分野でトップクラスです。僕がやっていた材料工学でも、とても多くの先端技術が日本から生まれています。コンピュータに使われる極限まで微細化されたトランジスタ製造技術については、多くの日本の研究者が世界的な成果を発表し続けていて、日本の最先端の研究成果が情報社会の明日を担っている、と言っても過言ではないと思います。

日本には、たとえ地味でもいわゆる「職人」的な極めて質の高い研究をしている人はたくさんいますし、革新的なアイデアを持っている人もあちこちにいるはずです。なのに、現実には、研究費用を工面するために、流行り乗ったキーワードの入るような研究計画書を書かなくてはなかったり、論文の本数を稼ぐことをキャリアのために常に考えておかなくてはならない。

そうしないと、研究者として生き残っていくことも難しいのだとしたら、せっかくある良い「種」もいずれは捨てられてしまいます。そういうものだと割り切るのは簡単ですが、せっかく何か新しいものが生まれるかもしれないのに、そこをトライできずに終わってしまうのは夢がないように思います。お金の話だけではなく、研究者が研究室の塀を飛び越えて(=Beyond + Lab)実社会とつながることでもっと可能性が広がるのではないかと思い、BeyondLab TOKYOを立ち上げようと決めました。

岩井 私たち起業家のベースキャンプであるImpact HUB Tokyoも、BeyondLab TOKYOさんの活動やビジョンに親和性を感じ、共催イベントを開かせていただくこと、非常に楽しみです。今後、東京だけでなく、日本で活動を展開していく中で、どんなつながりやコラボレーションを考えていますか?

田畑 東京大学在学時によく出入りしていた「Lab Cafe」が、これまでも今後も原点だと思っています。ただし、僕らはその場所をコアにしながらも、今後は都内をはじめ、日本各地ですでに出来上がっている無数の小さなコミュニティを有機的につなげられるようなインターフェースになっていけたらと思っています。

研究×アントレプレナーという切り口から、普段だったら絶対に交わる機会がない人たちやコミュニティを繋げてみたいと思っています。その中で、それぞれが共通でやっていることや考えていることを見てみると、また面白い発見があるような気がしています。

 

岩井 今後の展開について、考えていることを教えてください。

田畑 今回のVol.1では、「ラーニング」がテーマですが、そうした理由は、たくさんの異なる要素が絡み合う余白を残したトピックを選んでいきたい、と考えてのことです。

IoT/IoE 、人工知能などはある種、バズワードになっていますが、そうした流行りに囚われすぎるのは、BeyondLabの目指している理想にとってあまり良くないことだと考えています。BeyondLab TOKYOとしての存在意義を常に模索しながら、参加者からつながるコミュニティ創りをしていきたいと思っています。

それと、いかに「チーム」をつくるかという点もとても重要です。BeyondLabの活動の目指すところを考えると、誰か特定の個人がいないと回らないような組織では続いていかないでしょう。ある回のイベントに来て興味を持ってくれた人々が、それぞれに、ほんの少しだけ自らの知識や技能、時間、興味を次のイベントに注ぎ込んでくれるような形が望ましいのではないかと思っています。

今、自分は東京支部の代表を務めていますが、いずれはその役割がなくても、BeyondLab的なものがあちこちで日常的に開催されるようになるといいですね。

 


10/1(土)LabMeUp Vol.1 – Learning by BeyondLab TOKYO & Impact HUB Tokyo

BeyondLab TOKYOと、Impact HUB Tokyoは、2016年10月1日に、Impact HUB Tokyoで東京では初となるイベント「LabMeUp Vol.1 – Learning」を開催する。ラーニングといっても、教育だけでなく、マシン・ラーニング、人口知能など、様々な側面から研究者、アーティスト、起業家、企業内イントラプレナー、デザイナー、エンジニアなどが集い活発に議論する。興味のある方は、ぜひイベントページをチェックし、申し込んでほしい。

申し込みページ→https://eventsathubtokyo.doorkeeper.jp/events/51781

最新情報はこちら:
– BeyondLab TOKYO Facebook ページ: https://www.facebook.com/beyondlabtokyo/
– BeyondLab 本部Facebookページ(フランス語): https://www.facebook.com/BeyondLab
– BeyondLab 本部公式サイト(フランス語): http://beyondlab.org/

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