HOSTS’ STORY vol.3 Impact HUB Tokyoの日常

Impact HUB Tokyoでは、毎週様々なイベントが開催されています。しかし、どうしてそれほど多くのイベントを実施しているのでしょうか?それはイベントが日常業務とは異なるインプットを促し、新たなアイディアやコラボレーションの源泉となるからです。Impact HUB Tokyoがつくり上げるイベントには全て目的と意味があります。ここではその一部を紹介していきます。

失敗から学ぶカルチャーを育む「Fuckup Nights Tokyo」

「成功より失敗から学ぶことのほうが多い」とよく言われるにも関わらず、世の中には成功の秘訣を説く情報が蔓延しています。先人のリアルな失敗談を聞き、学びを得る機会はほとんどなく、講演で語られるのはほとんどが成功者のストーリーであるのが現状です。

Impact HUB Tokyoは、まずコミュニティ内部に失敗から学ぶカルチャーを育もうと、メキシコに端を発し世界中のImpact HUBで取り入れられているイベント「Fuckup Nights」を導入することを決めました。とはいえ、そもそも自らの体験をあまり語らない日本で、「失敗談」のシェアはハードルが高いものです。そこでまず直接的なコミュニケーションに向く英語でのイベントとしてローカライズし、「Failure Sucks, But Instructs」と題した第一回を開催しました。

赤裸々な失敗談がシェアされた初回のFuckup Nightsは大盛況で、失敗というテーマにも関わらず、会場はとても前向きで暖かい雰囲気に満ちていました。現在では英語と日本語を併用して実施する人気イベントとして定期的に開催されています。

Fuckup Nights Tokyoが定着したことによって、コミュニティにも変化が生まれました。ちょっとした失敗談を気軽にシェアし、そこからの学びについて議論するシーンが増えたのです。クライアントへの提案から帰ってきたメンバーがコーヒーを飲みながら、「ちょっとミスしちゃって」と話し始めると、そこで小さな反省会が始まります。リアルな失敗からの学びが共有されるとともに、少し肩を落としていたメンバーも、次のチャレンジに取り掛かるエネルギーを得ることができます。こうして「失敗を失敗と捉えず、次に活かしていく」というポジティブなカルチャーが、コミュニティに伝染していくのです。

自分のなぜ?を問う思考を刺激する「WHYセッション」

WHYをとことん掘り下げながら、普段何気なく忘れてしまいがちな事業のスタート地点に立ち返り、自身のビジョンやビジネスモデル設計のための思考プロセスについて、参加者のみなさんと共に学んでいくワークショップ。他の起業家のフィロソフィーやストーリーを聞きながら、自分がなぜ起業したのか、そして自分自身のビジョンが反映されているビジネスモデルはどのようなものなのかについて、深掘りして考えるきっかけを与えます。

共感で繋がるピッチを目指し、メンバー同士のフィードバックを糧に練習する「Pitch Practice」

事業アイディアに対してフィードバックが欲しいとい人たちを中心に、定期的にピッチ/事業プレゼンの実践的な練習が可能な場がピッチプラクティスです。オーディエンスがいる中で、自分自身の事業についてピッチする練習がしたいという人や、直近で事業プレゼンの機会があるという人、アイディアやプロダクトのプレゼンをして周りからのフィードバックをもらいたいという人にオススメのイベントです。

意図的にカオスを生み出す

Impact HUB Tokyoでは、事業とは関係なく楽しめるイベントも実施しています。そのひとつがアニバーサリーに実施した”餃子づくり”でした。「Make our own, Do it Together」をテーマに企画されたこのイベントは、皮も餡も全部自分たちでつくるという本格的なもの。メンバーとその家族が50名以上集まり、一日中ひたすら餃子を作り続けました。餃子の生産ラインをつくり、材料を準備してひたすら包むという、普段やったことのない経験。たまたま隣り合った初対面の人と共同作業をしたり、久しぶりに会ったメンバーと粉だらけになりながら語り合ったり、できあがった餃子を家族ぐるみで食べたりと、あっという間に時間が過ぎて行きました。

イベントを企画したファウンダーの槌屋は「こうした場も、コミュニティを豊かにしていくうえでとても大切」と語ります。ビジョンに向かって進む強靭なコミュニティも、テンションがかかりすぎると硬直化してしまうことがあります。そんなときには意図的にカオスを生み出してコミュニティをかき混ぜることも必要です。餃子作りひとつをとっても意味があるのが、Impact HUB Tokyoのスタイルです。

コワーキングスペースの未来へ———

コワーキングスペースという枠を超えて、Impact HUB Tokyoは常に進化しています。常に意識しているのは、自分たち自身が変化し続けること。コミュニティを観察しながら、彼らの変化やニーズを捉え、実験的な取り組みを導入していきます。

最近では、キッチンスペースを利用して、ランチやディナー、ケータリングお弁当デリバリーなど、フード関連ビジネスをローンチさせようと考える起業家向けのアクセラレータープログラム「Food Entrepreneur in Residence」のニーズが高まっています。その他にも、複数のビジネスを立ち上げてきた経験豊富な起業家向けのスカラシッププログラム「Entrepreneur in Residence」、ビジネスモデルを確立する過程にあるスタートアップ向けのスカラシップ・プログラム「Startup in Residence」なども同様です。また、Impact HUB Tokyoのファウンダー自身が、現場の運営を通じて学び、コンセプトを発展させ、新しいビジョンを実現させるための事業に挑戦し続けています。

Impact HUB Tokyoが信じるのは、「コミュニティ」こそが新しいラボラトリーである、ということ。あらゆる挑戦や実験、そこからの発見や変革は、タコツボ的な閉塞した環境からは生まれません。また、ひとりのスーパースターのような“起業家”にイノベーションを依存することも、持続可能性が高いとはいえないでしょう。Impact HUB Tokyoは、これからも未来の兆しを先取りしながら、コミュニティとともに進化していきます。

(取材・構成:石川孔明)