Impact HUB Tokyo

Founders' STORY

vol.1 Impact MAKERとは?

2017.07.18
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Questioning + Action = Impact


2013年2月、印刷工場だった建物の1階をリノベーションして始まったImpact HUB Tokyo。ファウンダーである槌屋とポチエが、白い外壁に大きく「Questioning + Action = Impact」と描いたのは、創業から2年が過ぎた頃でした。「現状に疑問を持ち(Questioning)」、その疑問に対して黙っていられずに「行動を起こしている(Action)」。そして、その行動は「社会に影響を与える何らかの活動や事業(Impact)」になっている。この方程式が、Impact HUB Tokyoに集まってきた人々に共通する姿勢であると、確信を持ったのです。

Impact HUB Tokyoには、そんな”起業家”たちが集まり、400人規模※のコミュニティに成長しました。”起業家”と聞くと、企業やNPOを立ち上げた創業経営者をイメージするかもしれません。しかし本来、アントレプレナー(Entrepreneur)とは、「現状に疑問を持ち行動を起こす人」のこと。Impact HUB Tokyoには、そんなImpact MAKERのコミュニティが形成されています。

Impact MAKERに業界や職種は関係ありません。創業経営者はもちろん、フリーランスやアーティスト、そして大企業に属するビジネスパーソンや行政職員。誰もがImpact MAKERたりえます。共通しているのは、現状の有り様に疑問を持ち、より良い未来に向けたアクションに踏み出す姿勢です。

“川の流れ”を変える「衝撃(インパクト)」

Impact HUB Tokyo 共同創業者&代表取締役 槌屋詩野

なぜImpact HUB Tokyoはインパクトにこだわるのでしょうか。発端はふたりのファウンダーの創業以前にさかのぼります。ファウンダーのひとりである槌屋詩野は、国際NGOやシンクタンクでの勤務を通して、開発途上国や欧州における環境・社会的責任投資や、海外との事業提携や研究開発プロジェクトに携わってきました。Impact HUBに出会ったのは、イギリス在住時。ロンドン北部・イズリントンで誕生したImpact HUBは世界中に広がり始めており、各地でインパクトを生み出そうと奮闘する起業家を惹きつけていました。

槌屋が訪れた各地のImpact HUBはそれぞれ個性的でした。社会起業家や環境アクティビストが多い、発祥の地イズリントン。運営にベンチャーキャピタルが参画し、スタートアップへの投資が続々と行われているサンフランシスコ。なかでも特に彼女が注目したのは、ロンドン中央部、ウェストミンスターのImpact HUBでした。そこには起業家や活動家だけでなくハッカーやエンジニア、デザイナーが参画しており、日々新しいコラボレーションが生まれていたのです。

Impact HUB Westminster (写真撮影:槌屋)

社会に一石を投じるのは、何も貧困や教育などの課題に取り組む人たちだけではありません。ロボティクスの未来を開拓する起業家も、世界の矛盾を表現するアーティストも、社会を変える担い手なのだ―ーーそう考えていた槌屋は、日本の“起業家コミュニティ”にも、オープンで多様性に満ちた関係性を育む空間が必要だと、突き動かされます。そして、東京で、自分自身がImpact HUB Tokyoをつくろうと決意しました。

Impact HUB Tokyoが考える“インパクト”は、“ひとりのヒーロー”が創りだすものではありません。自然で例えるならば、“川の流れ”が変わることに似ていると考えています。様々な自然現象が複雑に関係しあって川の流れを変えていくように、社会の仕組みも、膨大なアクションの蓄積の結果として変容していきます。社会を構成する個人にできることは、その「大きな流れ」に疑問を持ち、その流れを変えようと決意することからしか始まりません。そして、実際に“川の流れ”が変わるまで、「衝撃(インパクト)」を与える一石を投じ続けるのです。その光景は、まさにImpact HUB Tokyoで繰り広げられている日常であり、槌屋自身が見たかった光景そのものです。

日本らしく、グローバルに通用するアントレプレナーシップ

Impact HUB Tokyo 共同創業者&取締役 ポチエ真悟

もうひとりのファウンダーであるポチエ真悟は、槌屋とは異なるバックグウンドの持ち主です。彼はロンドンの金融機関でビジネスパーソンとしてのキャリアを積み、現地のスタートアップ支援に取り組んできました。ふとした機会から日本でも起業家支援にも携わることになったのですが、そこで直面したのはスタートアップの生態系の脆弱さでした。出会った起業家に熱意は感じるものの、自らのビジョンによって社会のルールを変えていくような「Game Changer」が極端に少なかったのです。革新性よりも周囲との無難なハーモニーを求める日本の起業家は、彼の眼にはやや物足りず「お行儀が良すぎる」ように映りました。

「これは起業家の資質だけの問題ではない」とポチエは語ります。創業時の起業家のビジョンや熱意が、短期的な利益を追求するリスク回避的な中間業者によって捻じ曲げられる場面を何度も目にしました。起業家の生態系を豊かにすべきベンチャーキャピタルや金融機関が、ダイナミズムに欠ける環境を率先してつくっていたのです。積極的に起業家教育に取り組むイギリスとは異なり、日本の政府・行政の起業家支援への理解は浅く、グローバルな舞台でビジネスを展開するための教育は皆無でした。

どうみても、イギリスと比べて日本の起業家を取り巻く環境は良いとはいえません。ポチエは絶望的な気分になりましたが、「ないものではなく、今あるものに注目すべき」と考えをリセット。日本らしく、かつグローバルに通用するアントレプレナーシップのあり方があるはず。そのためには、既存のシステムにインパクトを与える起業家を育てる、新しい生態系が必要だと考えました。

そのとき彼が出会ったのが、Impact HUB Tokyoでした。創業時に財務のスペシャリストとして参画し経営を安定化させるとともに、自身のスタートアップ支援の知見を盛り込んだ新たな起業家育成プログラム「Team 360」や、ピッチイベント「Spark Plug」を立ち上げました。

Be the change – 私たち自身が変化になる


ファウンダーのふたりはこう語ります。「Impact MAKERにとって、変化はトレンドのように追いかけるものではない。他者を変えようとするものですらない」。マハトマ・ガンディーの表現を借りれば、Be the change that you wish to see in the world ― 私たちが確実にできることは、唯一変えられる存在である自分自身を、望む世界を体現する方向へ変化させることだけ、と。

ここに集まるImpact MAKERたちが日々進化し続けるように、Impact HUB Tokyoも常に変わり続けています。この場で発生するアクティビティやコミュニケーションも、そしてスペースのレイアウトさえも、絶えず変わり続けています。Impact HUB Tokyoのコミュニティにおいて、唯一変わらないこと―ーーそれは変化し続けることなのです。

※2017年6月末現在。

(取材・構成:石川孔明)